1. 問題の所在

 去る11月28日に当研究所が発表した金融機関の不良債権問題解決のための公的資金投入に関する緊急提言に対しては、数多くの方々から種々のコメントが寄せられたが、それらは概ね次の3点に要約される。

  1. 預金者保護のためには公的資金の投入が必要という主張は理解できるが、それは一方で、預金者はいかなる意味でもリスクを負担しないことを意味する。このため、大口の投資家になかには、信用度が少々劣る金融機関に市場実勢を大きく上回る金利で資金を預けるというモラル・ハザード的な行動が生じかねない。そうした事態の発生を回避するためにも、預入金額を基準として保護すべき預金者とリスクを負担すべき(保護の対象としない)預金者を峻別する必要があるのではないか。
  2. 日産生命の破綻に際しては保険・年金金額の減額が実施されたことからも明らかなように、保険・年金契約者と預金者とではすでに保証についての公平性に歪みが生じている。納税者のお金を使うのにもかかわらず、預金者と保険・年金契約者との間で取り扱いが異なることに関しどのように考えているのか。
  3. いわゆる貸し渋りの発生など現下の信用問題を解消するためには、金融機関の自己資本充実が喫緊の課題となっている。そのため、不良債権処理に伴い自己資本が大きく傷んだ金融機関に対しては、優先株の買い上げなどを通じて公的資金を直接投入する必要があるのではないか。

 こうしたコメントに対する回答を兼ねて、公的資金投入に関するわれわれの考え方をもう少し詳しく述べることにしたい。

21世紀政策研究所