中国

シンポジウム「二つの政策からみる中国的特徴~台湾および金融財政」を開催しました

左から岡嵜研究委員、川島研究主幹、山口研究委員

 21世紀政策研究所の中国情勢研究プロジェクト(研究主幹=川島真東京大学大学院総合文化研究科教授)は2月26日、シンポジウム「二つの政策からみる中国的特徴~台湾および金融財政」をオンラインで開催しました。前半では山口信治・岡嵜久実子の両研究委員が講演。後半では川島研究主幹がモデレーターとなって、両研究委員とパネルディスカッションを行いました。概要は次のとおりです。


■中国の台湾侵攻シナリオ~構想と現実(山口信治 防衛防衛研究所地域研究部中国研究室主任研究官)

 中国が想定する台湾統一のシナリオは、①グレーゾーンシナリオ②限定的武力行使シナリオ③全面侵攻シナリオ――の三つに分けることができる。①はフェイクニュースといった影響工作や経済的な威圧、海上封鎖を想定した軍事演習などである。他にも海底ケーブル切断事故もその一つと疑われている。②は島しょ部、離島への侵攻である。ただし、成功しても台湾統一の目的は果たせず、国際的な反感も高まるため、現実的ではない。③は文字どおり、台湾本島へ軍事侵攻である。この場合、米軍が介入する前に決する速戦速勝アプローチが必須であるが、台湾の地形や現在の中国の戦力を踏まえると容易ではない。今後も米軍、つまり米国の台湾政策がカギになるが、トランプ政権の政策は不透明である。また台湾自身の強靭性を高めることも重要で、日本が協力できる分野は多くあるが、日本にとって台湾とは本質的にどういう意味があるのか、改めて議論する時期に来ている。


■中国の金融財政動向~不動産バブル破裂後の要注目点(岡嵜久実子 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

 中国共産党指導部は、2024年の経済の主要目標について、実質GDP成長率(対前年比5・0%)を含め、おおむね達成したと評価した。25年の運営方針は、経済政策において「安定のなかで前進」とし、高水準の対外開放の拡大、国内需要の拡大、科学技術革新と産業革新の融合的発展、不動産市場と株式市場の安定――などを挙げた。金融政策は「適度に緩和的」とし、十分な流動性の保持、人民元為替レートの安定、金融手段のイノベーション促進――などを挙げた。財政政策は「一段と積極的」とし、超長期特別国債の増発、地方政府特別目的債券の発行拡大、財政支出の構造改善――などを挙げた。今後警戒を要するリスクとしては、米中対立、不動産市場のリストラの遅れ、地方財政の破綻がある。中長期課題としては、世界の80位前後である一人当たりの国民総所得の向上、急速に進む高齢化社会に向けた社会保障制度の整備がある。


■パネルディスカッション

 川島研究主幹は、両研究委員の講演の共通点として、①中国独自の政策で中国的特徴がある②安全、セキュリティの論点が入る③トランプ政権の見極めが重要である――の3点を挙げました。研究委員との間では、①トランプ政権の台湾政策②台中の経済的デカップリングの影響③海底ケーブル切断など情報セキュリティ上の日本企業の対策④台湾の強靭性を高めるための日本の役割⑤日本の台湾政策と中国政策のバランス⑥金融財政政策における中国の特殊性⑦人民元の国際化⑧中国企業の国外進出の目的⑨金融財政面での日本と中国との対話⑩中国における日系の銀行の役割――などについて議論しました。

 

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