国際情勢・通商

佐橋客員研究委員が幹事会で講演

佐橋客員研究委員

経団連は4月15日、東京・大手町の経団連会館で幹事会を開催しました。東京大学東洋文化研究所教授で、経団連の21世紀政策研究所客員研究委員を務める佐橋亮氏が「今後の日米関係の展望--21世紀政策研究所米国ミッションを踏まえて--」と題して講演しました。概要は次の通りです。

 去る3月下旬に、21世紀政策研究所の訪米ミッションとして、ワシントンD.C.を訪れ、戦略国際問題研究所(CSIS)をはじめとする主要なシンクタンクや、有識者との意見交換を行った。トランプ政権は、①グローバル経済によって米国は被害を被っている、②同盟国などの安全保障を確保することによって、米国は過度な負担を強いられている、という大きく2つの点に関する不満を出発点に、内政の延長線上で外交を展開していると、今回の訪問を通じて強く感じたところである。

 

 足もとでは、とりわけ対中国との間で激しい報復関税の応酬が続いているが、中国に対する米国の捉え方としては、これまでの米政権に存在していた「安全保障上の脅威」という認識ではなく、むしろ「経済の敵」として受け止められていると見られる。

 

 同盟関係についても、従来の関係から変質していくことが想定される。米国の同盟国には、米国への投資をはじめとするアメリカ経済への協力や、米国の負担にならないような防衛・安全保障体制の構築が求められると考えられる。この点は日本も例外ではなく、米国経済への貢献や防衛に関する負担増は避けられないと思われる。特に、エネルギー分野における日米の協力が重要性を増すと見ている。

 

 このように、米国の変質はこれまでとは一線を画すものであり、「帰っていく黒船」とも形容できる。かつての日米貿易摩擦期を上回る大きな外交問題として認識すべきであり、不確実性の高い時代を迎えているという前提で対処していくことが求められる。他方、こうした中にあっても、やはり日米関係と米国の情勢分析をまずは中心に据えるべきと考える。より具体的には、経済界として、民間レベルの関係構築に努めるとともに、政策提案も含めた構想力と持続性のある新しい「シンク&ドゥタンク」を構築して対応していくことが重要である。

 講演終了後、経団連として、シンクタンク機能を担う21世紀政策研究所の活動をより一層強化していく観点から、「経団連総合政策研究所」に名称変更(2025年5月29日付)を行った上で、今後も日米関係をはじめとする情勢分析や、海外の大学・シンクタンクなどとの連携強化に努めていく旨、事務局より説明を行った。

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