哲学・リベラルアーツ

マルクス・ガブリエル教授との懇談会を開催しました ー資本主義の未来をめぐり意見交換ー

懇談会参加者

マルクス・ガブリエル氏

十倉会長

中島研究主幹

 21世紀政策研究所は、国内外に存在する経済社会の重要課題について、経済界とアカデミアが既存の枠組みを超えて英知を融合し、中長期展望のもと独自の視点から調査・分析を行っています。

 その一環として、2022年に「資本主義・民主主義」研究プロジェクト(研究主幹:中島隆博 東京大学東洋文化研究所所長)を立ち上げ、従来型の資本主義に起因する環境問題や格差問題、自由民主主義の危機を乗り越えるべく、国内外の様々な分野の有識者と議論を行っています。とりわけ、ボン大学(ドイツ)の教授でありTHE NEW INSTITUTEのアカデミックディレクターでもあるマルクス・ガブリエル氏との連携は、本プロジェクトにとって極めて重要なものとなっています。

 ガブリエル教授は、資本主義について、単に市場経済と生産手段の私有によって構成される経済システムであるだけでなく、社会の問題解決を図り、道徳的に進歩させるシステムであるととらえています。その意味で、資本主義における企業のあり方や事業は、本来、道徳的に正しいビジネスをしたか、倫理的問題の解決にどれだけ貢献したかという観点から評価される必要があると指摘し、現在の資本主義が「倫理的資本主義」となることが重要であると主張しています。こうした考え方は、十倉雅和会長が就任以来掲げている「社会性の視座(From the social point of view)」という考え方とも合致しており、2023年5月に行われたガブリエル教授と十倉会長との特別対談でも、両者の視点、方向性は同じであることが確認されました(注)。こうした中、21世紀政策研究所では2024年3月26日、ガブリエル教授の再来日の機会をとらえ、懇談会を開催することとしました。

 今回は二部構成とし、前半は、中島研究主幹同席のもと、十倉会長に加え、澤田純副会長、野田由美子副会長、柿木真澄副議長、稲垣精二副議長、片野坂真哉政治特別委員長が出席し、意見交換を行いました。現下の国際情勢、AIをはじめとする先端科学技術との向き合い方、さらには資本主義の展望等について、終始和やかな雰囲気のもと議論がなされました。ガブリエル教授の示すビジョンに対する踏み込んだ質疑応答もみられ、充実した意見交換となりました。

 後半は、「資本主義・民主主義」研究プロジェクトのもとに設置した、「資本主義の未来」研究ワーキンググループのメンバーとの意見交換を行いました。同ワーキンググループは、経団連の会長・副会長、審議員会議長・副議長が所属する企業の有志ら約30人から成り、「日本発の概念の普遍化」を研究テーマとして掲げています。この会合では、冒頭、ガブリエル教授が「倫理的資本主義」について基調講演を行った後、中島研究主幹が同ワーキンググループの活動報告を行いました。続く自由討議では、同ワーキンググループのメンバー企業における社会的・倫理的な問題への取り組み例が紹介されたほか、「倫理的資本主義」の実現に向けて直面している、または直面し得る課題や、わが国経済界が世界に向けて新しい価値を打ち出していくための方法論などについて、現在の資本主義の論理のもとで実際にビジネスを展開している企業ならではの視点から多様な意見が出され、ガブリエル教授との間で活発で建設的な議論が交わされました。

 

 21世紀政策研究所では、今回のガブリエル教授との懇談会で得られた知見も踏まえ、今後「資本主義の未来」についてさらに検討を進めていまいります。また、今般の意見交換の詳細および本プロジェクトの研究成果については、本研究所のウェブサイトに随時掲載するほか、新書・ニュースレターでの発信を行っていきます。過去の研究成果も掲載しております。こちらをご参照ください。

  哲学・リベラルアーツ | 研究分野 | 21世紀政策研究所

 

(注)「特別対談『望ましい未来社会の創造に向けて』マルクス・ガブリエル ボン大学教授 × 十倉雅和 経団連会長」の概要は、こちらをご参照ください。

 特別対談「望ましい未来社会の創造に向けて」


また、YouTubeにおいて、対談および関連シンポジウム「資本主義の未来を考える」の動画を公開しています。

 ガブリエル教授「資本主義の未来」を語る

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