国際情勢・通商

セミナー「G7とインド太平洋の現状と展望」を開催

佐橋客員研究委員

会場の模様

 21世紀政策研究所は7月5日、東京・大手町の経団連会館でセミナーを開催しました。同研究所で客員研究委員を務める東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授が、「G7とインド太平洋の現状と展望」と題し講演しました。

 佐橋研究委員は講演のなかで、米中関係は融和的な雰囲気が広がっているが、中長期的に対立が続くと推測。こうした状況下において、日本企業に必要なアクションについて指摘しました。講演の要点は次のとおりです。


■目先の融和路線

 G7共同声明では中国に対し、近年では使われてこなかった「われわれと関与することを求める。中国もわれわれに関与してほしい」などの前向きな言葉を用い、融和的なメッセージを送っている。中国もブリンケン米国務長官の訪中を受け入れるなど融和路線に対応している。これは米国バイデン政権が目先の危機を望んでおらず、中国も足元経済に対する不安など、表面的な思惑の一致からなるものである。


■構えを解かない西側

 一方で、G7共同声明には中国による経済威圧への対応、サプライチェーンの強靭化などが盛り込まれるとともに、G7の後EUも経済安全保障戦略を新たに発表していることから、西側は全く構えを解いていないことがわかる。両陣営とも本当に欲しているのは、対話の先にある経済的な実利である。長期的には得るものがないため、構造的な問題に帰結し米中対立は続く。


■相互不信が生み出す対立構造

 今の世界を取り巻くキーワードは「不信」である。大国間の相互不信が事態を混乱させている。このため本来ならば合理的な解決策があるはずなのに、軍事的のみならず経済面でも対立構造をかかえてしまって、相手の本質がわからずジレンマに陥っている状況にある。

 講演後は参加者から多数の質疑があり、同テーマの関心の高さをうかがわせました。例えば「中国が引き続き魅力的な市場であることは変わらない。こうしたなか、日本企業はどのような中国戦略を取るべきか」という質問に対し、佐橋研究委員は、まず米国の状況をよく理解する必要があると述べました。そのうえで、米中対立のもとでも中国とうまく渡り合っている米国企業が存在するのは、自国がつかんでいる情報を理解しているためであり、日本企業も米国企業同様に米国のことをよく知ることが大切であると語りました。また、「米中および関連国のパワーバランスは今後どうなっていくか」という質問に対しては、中国がパートナーシップ外交をどこまで展開できるかによると応じました。

 21世紀政策研究所は、これまでも国際情勢の変化について鋭意研究を進めてきました。不確実性が高まる昨今、今回得た知見も活用し、今後もより一層の研究に励んでまいります。

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