出版物

2009/08/25

地域再生戦略と道州制

林宜嗣+21世紀政策研究所(監修)
日本評論社(2009年8月25日発刊)

国の力を強くするためには地域が元気でなければなりません。過去の国家財政依存型地域政策は制度疲労を起こし、さまざまな弊害が表面化しています。地域格差が拡大している現在、地域再生戦略としての道州制に期待が高まっています。

「地域再生戦略と道州制」について

グローバル化、少子高齢化、財政危機、東京一極集中等、わが国の社会経済を取り巻く環境が変化するなかで、地方の疲弊が大きな問題となっています。現行制度の微修正では将来における地域の力を維持増進させることは不可能でしょう。いまや、パラダイムの転換を踏まえた制度設計が求められており、道州制はこうした「国のかたちを変える」ものです。つまり、道州制に期待されることは地域再生戦略としてのそれであり、キーワードは「地方分権プラス広域化」なのです。

現在、道州制に関する議論は活発に行われているにもかかわらず、多くは国と地方の権限の配分といった制度論や、抽象論の域にとどまっていて、道州制のメリットもわかりづらくなっています。日本の将来を左右する重要な政策課題であるのに、道州制が国民的議論にまで高まらない原因はこのあたりにあるのかもしれません。

21世紀政策研究所はタスクフォース「地域経済圏の確立に向けた道州制の導入と行政改革」を立ち上げ、
1. 地方分権
2. 広域化(圏域の一体的取り組み)
3. 行財政の効率化
という視点から2年間(2007年4月から09年3月)にわたって研究を進めてきました。本書はその成果をまとめたものです。

本書は提言編と分析編からなっており、提言編では、
1.地方の実像把握
2. 道州制の意義とそれを実現するための道州制の基本設計図
3. 州間格差を解消するための日本型水平的財政調整制度
4. 道州制内での市町村間格差の是正
5. 道州制に対する懸念への答え
が示されています。

本書の大きな特徴は、道州制のメリットを可能なかぎり数値で表そうとしたことであり、その成果は分析編において、
1. 道州制による財政支出の削減効果や公共投資の分権化による域内総生産に与える効果
2. 道州制の導入が地域住民の福祉にもたらす影響
3. 高齢化と労働力人口の減少が地域経済ひいては財政の将来に及ぼす影響と、道州制導入によるインパクト
4. 市町村合併が行政運営に及ぼす規模の経済性の検証と県の役割変化の予測
となっており、あわせて、道州制についての都道府県知事へのアンケート調査と、民間研究機関等へのヒアリングの結果が示されています。

道州制が「国のかたちを変える」ほどの制度改革でなくては、持続可能性すら危ぶまれている地域の再生は実現しません。だが、大改革であるだけに道州制実現への壁は厚いのです。

本書がこうした壁に穴を開け、地域再生への道しるべととしていささかなりとも貢献できれば、執筆メンバーにとって望外の喜びです。

関西学院大学教授 林宜嗣(前21世紀政策研究所 研究主幹)

 

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