陪審制度についての大学生意見集約結果報告の掲載について

2000年2月

 司法制度改革審議会が12月に行った論点整理において、今後審議会が取り上げる検討項目として、陪審制度も挙げられた。陪審制度は国民の理解と協力のもとに存立する制度であると考られることから、陪審制度を論じるには、国民がこの制度をどう捉え、どういう意識を持っているかをまずもって認識し、それを踏まえたうえで導入の是非・可否等、掘り下げた議論を展開することが必要不可欠であると考える。

 昨年9月27日、21世紀政策研究所では、早稲田大学法学部生85人を対象として陪審制度についてのアンケートを行った。当研究所の集計・分析結果によれば、

  • 陪審制度の導入のメリットについて言及した人は全体の44.7%
  • 陪審制度の導入に不安を感じると述べた人は全体の68.2%
  • 自分が陪審員として人を裁くことについて述べた人のうち、やる気があるなど積極的な意見を述べた人は33.3%、気が重いなど消極的な意見を述べた人は66.7%
  • 自分が陪審員となった場合に、感情や外部の声に左右されずに客観的な判断ができる自信の有無について意見を述べた人のうち、自信があると述べた人は25.9%、自信がないと述べた人は74.1%
  • 陪審員の事実認定に対する信頼性について述べた人のうち、不信感を示す意見または職業裁判官の事実認定を信頼するとする意見は91.2%、心配する必要はないとする意見は8.8%
  • 分が専門的訴訟の陪審員となった場合に、専門的内容を理解して判断ができる自信の有無について意見を述べた人のうち、自信があると述べた人は27.8%、自信がないと述べた人は72.2%
  • 自分が刑事被告人となった場合、陪審裁判と職業裁判官による裁判のどちらを選択するかについて意見を述べた人のうち、陪審裁判を選択すると述べた人は3.0%、職業裁判官による裁判を希望すると述べた人は63.6%、身に覚えのある場合は陪審裁判を希望し身に覚えがない場合は職業裁判官による裁判を希望すると述べた人は21.2%
  • 国民に陪審義務が加わることについて肯定的あるいは否定的意見を述べた人のうち、肯定的意見を述べた人は24.3%、否定的意見を述べた人は75.7%
  • 自分が暴力団がらみ事件の陪審員候補となった場合に、冷静に判断できるかどうかについて意見を述べた人のうち、心配ないとする意見を述べた人は11.5%、圧力や恐怖を感じると述べた人は88.5%であった。

 このデータは、早大法学部生100名弱という極めて限定された個人に対するアンケート集約・分析結果であり、過度の一般化は避けなければならない性格のものであるが、陪審制度の導入の是非・可否を論じるには、実証的見地からの議論が不可欠であると考え、インターネット上に掲載することにしたものである。

21世紀政策研究所