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今日はわれわれのシンポジウムの前振りといいましょうか、ちょっとした宣伝をさせて頂きます。 10 月 4 日水曜日の午後に「民営化郵政の企業価値と株式公開」というテーマでシンポジウムを行います。私どもの研究所の研究員 3 人が報告をいたしますが、それぞれのテーマは「株式公開」「郵貯銀行の企業価値」「簡保生命保険の企業価値」です。民営化郵政の企業価値という観点から、いかなる価値を投資家に対して主張するのか、あるいはそれを巡ってどういう形で議論が展開するのか、を考えてみるシンポジウムです。コメンテーターとしては慶應義塾大学の池尾和人先生、そしてプライベートエクイティからはユニゾンキャピタル代表取締役の江原さんに参加してもらおうと思っています。
こうしたシンポジウムを企画した意図を少し述べてみたいと思います。民営化郵政の問題は 1 年前でしたら、これが良いのか悪いのか、こういう議論をやっていました。しかし郵政民営化関連法案が議会を通り、そして現実に来年 10 月 1 日からは日本郵政株式会社という持ち株会社の下に四事業会社をぶら下げる郵政民営化の具体的な形が登場します。従いまして、課題は本格的なものになろうとしているわけです。これに対する取組みはいろいろあるわけですが、今回のシンポジウムで取り上げるのは、株式上場というものを通じて何を実現しようとしているのか、というテーマです。もともと民営化というのは、公社を株式会社にすることが第一なのですが、続いてこの株式会社の株式を売って、投資家目線で評価してもらうというポイントが重要なのです。株式会社にするというのは、これは株主の目線で見るということですから、このときから郵政の政治からの遮断が始まります。これは極めて重要なことです。これまで政府事業として行われてきたことが、小泉流に言えば「民にできないのか、官にしかできない業務なのか」というのが問いかけであって、これはもう民間でできるということになった。従って民間でできるというのは、株主の目線に沿った経営が望ましいということですから、これが入ると確かに政治からの遮断が起きます。
政治からの遮断が起きるというのはどういうことか。これまで政府事業として行われていた郵政事業の段階においては、政治からの介入もありましたし、あるいは政治からの介入を通じてある種の供給制限を人為的に生み出し、そこに超過利潤が発生するメカニズムが放置され、あるいは意図的に持続させられたということがあったわけですが、これが断ち切られた。これが郵政民営化の第一歩だったわけです。続いてこの民営化法案の中で金融を担う郵貯、簡保という二つの経営実態を、それぞれ日本郵政株式会社の下における子会社としてぶら下げた上で株式処分をする。そして 10 年以内に完全処分するというのが民営化法制の中に入ったわけです。このことによってそれでは郵貯、簡保に一体どういう企業価値があるのか、本当に株主が投資してくれるのかどうか、この視点からの議論になろうとしているわけです。
もちろん株式が売れればよいという問題ではありません。民営化関連法案について言えば、残り二つのテーマがあります。一つは民営化を通じて国民の利便が向上すること、と書いてあります。もちろん納税者に民営化の後に追加負担が生ずるなんてことは、もともとあってはならない話なのですが、そんなことはあり得ないということと、何らかの形で民営化の果実が国民に均霑するようなものでなければいけないというようなことが書いてあります。従いましてこれはもちろん破綻なんていう状態があってはいけないし、そのためにこそ有能な経営者が投入されるべきだということにもなるでしょう。
もう一つは、民間の秩序の中にちゃんと入って欲しいということです。これはイコールフッティング、民営化された郵政は民業と同じ条件において仕事すべきだということになります。逆に言いますと、政府がまだ株を保有している段階において、民業圧迫のようなことが起きれば民間秩序の中に粛々と入るということには反するわけです。そうしたいわゆる官業の肥大、株式会社ですが政府の関与が残っているので一応「官業の」と呼ぶとすると、官業の肥大を引き起こすようなことがあってはならないこともあわせて書いてあります。
そうしますと、民営化関連法案には三つ書いてあるということになるわけです。国民の利便の向上、そしてイコールフッティングという形で民間の秩序に馴染むようになること、そして三番目に株式公開を通じて企業価値というものを高め、結果として国庫にお金が入れば大変望ましいということになるわけです。いずれにしろ企業価値の向上を通じて投資家に株式を購入してもらえるような状態になるよう経営陣は注力しなさいと書いてあるわけです。
今回われわれが行う民営化郵政の企業価値に焦点を合わせたシンポジウムは、このテーマをこなすには当然マーケットで評価されなければならないという観点から議論したいと思います。マーケットで評価されるとはどういうことかというと、企業価値あるいは利益計画、あるいは新しい企業内革新というものがどのように導入されるのかということになります。金融実態をもつこの二つ、郵貯、簡保について言えば、それぞれがどのような形で企業価値を持ち得るのかということになります。このテーマはまだ日本の中で本格的に議論されてはいないというのが私の理解です。
もちろんこれまで NTT や JR の民営化がありましたから、官業から民業へ、そして株式公開へというテーマは確かにありました。しかし NTT や JR の場合と今回は違う面があります。 NTT の場合は、何しろ電気通信の分野において圧倒的な比重を持っていた段階における民営化ですし、 JR の場合は、輸送にかかわって明らかに存在感を持ち続け、そういう実態があったわけです。もちろん民鉄との間で JR は幾つかのところで競争状況にありました。しかしこの民営化した JR のそれぞれについては競争はもちろんあったものの、これが肥大化するというか、既に肥大化しているというテーマではなかったように思います。
ところが今回銀行と保険ということになりますと、もう民間で十分に秩序が形成されているではないか。あるいはサービスが国民に対して十分為されている。もっと言えばオーバーバンキングと言われるように銀行の数や金融機関従事者の数は多すぎる。結果としてなかなかスマートプロフィットというのでしょうか、良い形で利益を上げ国際社会に展開していくというような金融機関が生まれない。それだけ国内の競争条件が厳しい。こういう言われ方をしていた分野において民営化が為されようとしているわけです。
企業価値をどのようにつけていくのかというテーマが日本郵政株式会社の経営陣には当然出てきています。マーケットでどのように評価されるのかということと、そのマーケットで評価されていくためにどのような形で、例えば新商品とか新しいビジネスのやり方というものが登場するのか。さらに今度はこれまでの民間が持っていた秩序との間に本当に円滑なといいましょうか、どこかでお互いが助け合う、今までなかった金融マーケットをつくる。それを通じて多くの人に、あるいはこれまで民間秩序の中で仕事をしてきた金融機関経営者にある種の救いの手を差し伸べる面もある、というように論ずることができるのかどうかというテーマであります。これは非常に重要なテーマですし、今すぐ全部結論が出るわけではありません。
今回 10 月 4 日に行うシンポジウムは第一回目のシンポジウムだと思っていまして、年末に二弾目をやろうと思っています。そういう意味では、建設的なコメントが欲しいというふうに思っていまして、先程言いましたように最も適任と思われる人の中からお二人にコメンテーターをお願いしています。マーケットで評価されながら新しい秩序を模索するという全く新しい民営化のパターンが日本の中で今生まれようとしています。ちなみにこのことについては、国際社会からも大変高い関心が寄せられています。国民の金融資産の 4 分の 1 を吸収してきた郵便局が民間秩序の中に、しかも民間に活力を与える形で、本当に軟着陸といいましょうか、民間の仕組みの中に入り込んでいけるのかどうか、大変な関心を呼んでいます。そのためにはこの株式公開を成功させる必要がありますし、更に言えば企業価値をどのようにつけるのかということが重要です。これは興味深いと思われた方には、是非フロアから参加して頂きたいと思っています。 |