参議院選の投票まで一週間ちょっとという時期にきました。今回の参議院選挙は、小泉さんが制度改革を掲げて戦って、自民党に果たして票がもう一度舞い戻ってくるかどうか、ということがポイントになっているようです。確かに小泉自民党が大勝するとなりますと、参議院選後の政局の中で、構造改革のテンポがいっそう早まるという可能性が出てきます。問題は連立与党の内部で構造改革についての取り組み、あるいは肌合いが少しずつ違うことだと言えるのではないでしょうか。
いろいろな世論調査がありますが、痛みを伴う経済構造改革に対して、かなり多くの政党支持者たちがそちらに票をあげているわけですが、こうした動きにかなり冷淡なのが公明党支持者だと言えると思います。自由党や民主党の支持者、また共産党の支持者までも、たとえマイナス成長でも構造改革を進めるべきだという意見が80%を大きく超えているわけですが、公明党支持者の場合には、こうした比率は70%以下です。そういう意味では、公明党支持者の構造改革に対する熱の入れ方が多少低いと言えると思います。構造改革を加速するということになりますと、これはおそらく大きなテーマになるのではないでしょうか。
また、郵政三事業の民営化についても、自由党、民主党の支持者は70%近い支持を、この郵政三事業の民営化に寄せているわけですが、公明党の支持者は50%を下回る程度ですし、それに匹敵するのは社会党支持者ということになります。そういう意味では、果たして参議院後の連立の組み方が現在のままかということになると、少しずつ肌合いが違ってくる可能性があります。
そして、経済構造改革を行ったときに、大型の倒産が相次いだり、失業者が増えるという可能性がよく指摘されています。もしそうなれば、デフレの加速ということになり、デフレの加速に対して構造改革をいっそう進めることは、かえって状況を悪化させるのではないか、そういう意味では構造改革に手加減をし、来年度予算のみならず今年度も補正予算を組んで景気の悪化を止める、という方針が出てくる可能性があります。もし議論がそのあたりにきたときに、いったいどういう展開を遂げるのか、かなり興味深い姿になると思います。
私は、ホワイトカラーの失業問題が少し深刻になる可能性があるととらえています。大型倒産とか銀行の不良債権処理によって、失業者数が極めて大きくなるということにはなりそうにないと私は思っています。しかし、一連の過程の中で、40代から50代のホワイトカラーの人々に皺がよる可能性は非常に強いと思っています。人数はもちろん極端に大きな数になるわけではありませんが、しかしこうした雇用調整の不安を感じている人の数は相当多いと言えます。子供を育てるにもまだお金がかかる年齢ですし、それから一部には親の介護の問題が出てきている世代でもあります。
そういう意味では、こうした40代から50代にかけてのホワイトカラーに雇用調整の問題が出たときに、果たして新しい事態に対して再訓練を通じて、すぐに挑戦できるのかというテーマがあります。これはもうセーフティネットというよりも、商売を通じて新しい機会をどのように社会は与え続けることができるのか、というテーマとして、本格的に取り組むべきだと私は思っています。そういう意味では、構造調整を果敢に行うということは、働き盛りで自らに自負心を持っている人達に対して、新しい機会をどのように提供し続けることができるのか、ここにポイントがあると思っています。
それから構造改革をどんどん進めた場合に、デフレが加速するのではないかという説に対して、私はその説はとっていません。確かに調整に伴って、一部に景気の悪化は起きるでしょう。しかし、そのことによって経済の土台が崩れる、デフレが加速することによって、経済実態が大崩れすることはないと思います。それはなぜか。一番大きな理由は改革を行っている政権に対して、助っ人が現れるということです。これは海外から日本の中長期的な資源配分の改善を見越して、日本に対して直接投資または証券投資というかたちでの投資が起きるということです。1980年代の後半から90年代にかけて、世界の先進各国において経済改革が相次いで行われました。いずれも大崩れした国はありません。もちろん、一時失業率が二桁になるとか、非常に過酷な局面を迎えた経済もありますけれども、しかし改革を中断することなく持続したところはすべて、回復の手がかりを得ています。
一番大きな理由は海外の人々がその国についての信頼を取り戻すときには、自国の投資家や企業家もまた、自らの経済に信頼を再び寄せるというメカニズムが観察されたからです。グローバル経済の下における経済構造改革は、とりあえず海外の評価の見直しを通じ、結果として自国内の投資家や企業家の自国経済の再見直しにつながるわけです。おそらく日本経済も、他の国々に比べれば遅れましたけれども、21世紀にはおそらくそうした改革の道筋を辿ると考えられます。このあたりが1920年代から30年代にかけて、構造調整の結果デフレが加速し、経済の土台を踏み外すような不安定過程に入ってしまった、というようなことを避けられる一番大きな理由ではないでしょうか。80年代から90年代にかけての各国の改革の歴史は、このことをわれわれに教えているように思います。
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