来週には7月に入って、暦年下期になります。今日は、下期から来年にかけての日本経済の歩みについての私の判断を示したいと思います。今年の初めにアメリカの景気が大きく落ち込んでいることがわかりました。この時期について、いくつかの予測がありました。この暦年下期には、V字型回復を遂げるのではないか、という考え方が一部にはありました。私はこれまでも述べてきておりますように、緩いU字型回復で、来年の初め頃から徐々に回復するとアメリカについては判断していますが、少なくとも一部には、この下期にはもうV字型回復が始まるという説があったわけです。しかし、それは不可能だということが今日の時点ではかなりの程度はっきりしてきました。そこで問題は、今後の世界経済と日本経済にどういう力が働くのかということになります。
アメリカとヨーロッパについていいますと、いずれも消費者物価上昇率が少し上がってきていることが気になります。これは原油価格の上昇が背後にある、あるいはもっと言えば中東情勢に対して、先進国とりわけアメリカのコントロールが次第に及ばなくなってきているという面があります。こういう中で物価上昇が少し心配だということになりますので、アメリカの金融情勢についても、欧州中央銀行の金融政策についても、この先金利の一層の引き下げ余地はないのではないかという考え方が出てくると思います。ということは、アメリカの景気回復がかなり緩いものになり、ヨーロッパの金利引下げのペースは相当緩やかにならざるを得ないということになるわけです。
そのように考えてみますと、日本はこの下期から来年にかけて、輸出によってGDPを引き上げることはかなり難しいという前提を取らざるを得ません。ということは、半導体を始めとしてエレクトロニクスの調整がまだしばらく続くと考えますと、日本の中で持ち上げる力は一体どこから出てくるのか。これに対して大変悲観的になりますと、構造調整も加わり、しばらくはデフレ的な要素が強くなるというシナリオが出てくるわけです。もちろんわれわれはこのシナリオを無視することはできませんが、しかし、欧米と違って日本はもっと前から調整を始めていて、株価についても、その他の資産価格についても、かなり既に調整していると考えますと、新しい要因が、すなわち世界の未来を築く能力が、今回は日本に多めにきてもおかしくないという要因もあるわけです。そのためには日本で、それがもう底値だ、あるいは日本経済の調整の先行きは見えた、そして展望のきく人から将来を作り上げる資源を日本に持ち込む、こうした過程が始まるかどうかが、下期以降の日本経済の大きい要因だと思います。
第二次世界大戦後、日本の景気の回復は輸出でいくときがありました。それからまた、公共事業の拡大を通じて政府が手を差し伸べることを通じて景気の回復軌道に乗ったこともあります。しかし今回はどうやら、海外からの日本の見直しを通じて、これをきっかけに日本の投資家、日本の企業家もまたものの見方を徐々に変えていく、そういうプロセスが始まるのではないかと私は期待しております。これが動き出すためには、悪材料が出尽くすとともに、将来の秩序形成にあたって、これでいくんだ、これならば大丈夫だという確かな筋立てが要るわけです。
小泉首相の訪米までにこうした案が出るのかどうかについて、いろいろ考えてみました。私は、一体どういう案が出てくるのかについて若干は期待しています。政府と民間の双方において、共通に確認すべきことを確認した上で新たな手立てに入るというステップが、この下期に入って積み重ねられるならば、もうこれ以上の悪化はない、あるいはこれ以上売り込む余地があると考えるよりは、むしろこのあたりで拾ったほうが勝ちだ、という考え方が出てくる、このきっかけをどう作るのかだと思います。そういう意味では、今回は日本株式会社という構造はなくなっていますが、しかし、言うにいわれぬ政府と民間との対応が交互に繰り返される中で、一つひとつ骨格を作り上げていく作業が必要なのではないかと思います。構造調整を進めるとともに、日本のサプライサイドを整備することによって、新しく事業を起こす人、新しく経営資源を持ち込もうとする人にとって、これこそがまさに出発の時だというサインを、どのようにして送れるのかが重要だと思っています。下期、どういうかたちでそういうきっかけを作り上げていくのか、21世紀政策研究所でも一つひとつ具体的に考えていきたいと思っています。
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