2001/5/25 不良債権の最終処理 (RealPlayer再生)
 今日は、不良債権の最終処理という問題を考えてみたいと思います。これは森政権の最後のところで不良債権を整理して、日本経済がきれいなかたちで2年あるいは3年後を迎えたいという意図でした。これは、今順調に進もうとしているのだろうか。

 不良債権の最終処理の中で、債権放棄の問題がひとつのテーマになりました。債権を一部放棄してもらえれば企業は再建できる、と考えている経営者が多いわけです。私的整理というかたちで事業会社に再建計画は作らせますが、債権者である銀行が貸出債権の一部を放棄して、事業会社の再建を支援するというスキームが現実にいくつか動いていたからです。自民党の実力者の中には、この夏の参議院選、それからひょっとすると起きるかも知れない秋の衆議院選挙を前にして、大きいゼネコンだけが債権放棄の恩恵にあずかれるというのはおかしい、という主張がありました。中小企業もまた、こうした債務を削減してもらうスキームがあったほうがいい、というので私的整理に関してガイドラインを作ることを緊急経済対策の中に入れたわけです。

 それではこの債権放棄、事業会社にしてみれば債務の一部棒引きということですが、簡単にガイドラインができるものなのかどうか、という問題があります。大きな事業会社の場合には、銀行はその能力を集めまして、相当の手間をかけてもこの再建計画を作り上げます。しかし、現在は大手都銀といえども、その7割以上、4分の3ぐらいは中小企業取引ですから、中小企業取引の一つひとつについて、私的整理の枠組みを作っていくだけの人的なゆとりはありません。このため、こうした場合には多く法的整理というかたちで、裁判所に事業者が会社更生法を申請したり、あるいは民事再生法を申請したりするわけです。こういうかたちで公的な整理に入りますと、実質上この事業会社、とりわけ中小企業の場合は新しい信用を得たり、新しいお客を獲得することが難しいわけですから、私的整理のほうが望ましいわけです。但し、この私的整理は、事業会社の側にもちろんエネルギーが求められますが、銀行サイドで、債権者サイドで大変なエネルギーを要する、そして手間もかかります。日本における人的資源を考えてみますと、あらゆるケースにおいて、この私的整理を基本とするということには無理があるわけです。このあたりに金融担当大臣としての柳沢さんの苦労もあったようです。私的整理が前提だという話から、今では公的な整理が主体になるべきだとの主張に変わってきています。

 そしてまた銀行や事業会社の間で、いわば民間と民間のあいだ、業界用語で「民民」といいますが、民民で債権放棄、債務の一部棒引きについてのガイドラインを作って欲しい、そして金融庁は一歩も二歩も後ろに退く、というのが現在の柳沢さんと金融庁の態度のようです。それでは、いわゆるこうした民民でガイドラインができるのか。これまでの一つひとつのケースについて見てみますと、相当のエネルギーがあった上でなければ具体的に基準は作られていません。ということは、今、債務過多の企業が大変多いなかで、一般的な基準を作れば私的整理が進む、と考えている当事者はほとんどいないように思います。そういう意味で、緊急経済対策に掲げられた不良債権の最終処理ですが、私はまだまだこれから曲折がいくつもあると思います。

 21世紀政策研究所でも、不良債権の最終処理の問題が一体どのようなルールに基づいて行われるべきなのか、それから具体的にこうした過程が進んだときに、日本経済の内部に何が起きる可能性があるのか、検討してみたいと思っています。とりあえずは論点整理ですが、できるだけ早い時期に金融シミュレーションというかたちのものができればと思っています。
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